「ね、姉ちゃん。もう部屋の中は飽きたよ~外に出ちゃダメなの?」


きょうだいの中では一番活発な海が、イスの上で足をプラプラさせながら訊いてきたけど。
間宮さんの警告が頭にあった私は、思わず「ダメだよ!」と反射的に叫んでた。


ポカンとした顔の海を前にして、すぐハッと我に返った後に慌てて付け足した。


「そ、外は寒いし……迷子になるといけないでしょう。ここは知った町じゃないから」

「寒いのなんてへっちゃらだよ! それに、知らないから探検するじゃん。な、翼兄ちゃん。何があるかわくわくするよな」


両手を握りしめた海は、期待に目を輝かせてる。もともと活発でじっとしてるのが苦手な彼は、1日でも我慢できないだろうなと考えていたけど。案の定外に出たがった。


「なあなあ、いいだろ姉ちゃん。ただ探検するだけだから!」


キラキラとした目で見られたら、ダメだなんて言いたくない。だけど、間宮さんの危険があるという言葉も無視できない。


どうしよう……と困り果てた私に、隅っこに座ってた房江おばあちゃんから提案があった。


「翠ちゃん、子どもたちだけでは不安なんだろ?なら、年寄りではあるが私が一緒に行こうかねえ」