「お姉ちゃん、お帰りなさい!」
あの後すぐに電車で帰った私たちは宿泊中のホテルのリビングルームに顔を出すと、弟達が一斉に駆けよってきた。強盗に殴られ腫れた頬を見えないように隠しながら、みんなを笑顔で抱きしめた。
「ただいま。みんないい子にしてた?」
一番年上の翼に訊いてみると、「うん……」とあまり明るくない様子で返ってくる。昨夜はあれだけ高級なホテルに泊まれることを喜んでいたのに……。
「ご飯はちゃんと食べたの?」
「……あ……うん。食べたよ」
歯切れが悪く翼が答えた瞬間にグウッと見事な音が弟のお腹から聞こえて、思わず噴き出した。
「やっぱり、食べてなかったんだね」
私がそう言えば、翼はお腹を押さえながらうつむいてしまってた。
「そうなんだよ!」
突然リビングルームのドアがバンと開くと、レン王子の侍従長であるアベルさんがずんずんと部屋の中へ入ってくる。その手には、いろんなファストフードの袋が握られてた。
「僕がなんでも食べていいよ! ってケータリングサービスやルームサービスのメニューを渡しても、大丈夫ですって突き返されたんだ。まだまだ成長期だからいっぱい食べないといけないのに。子どもは遠慮しちゃダメだぞ」
アベルさんは今日弟達のお世話を買って出てくれた。心苦しく思いながらも、必要なことだからと言い聞かせてレン王子と街に出たけれど。
やっぱり、何を食べても何を見ても。弟達を一緒にと思うばかりで。心の底から楽しめなかった。



