殴られて腫れた頬を手当てしたり、何だかんだと引き留められて。私とレン王子が無事に店から出られた時には3時を過ぎていた。
(強盗に遭ったことは弟たちに知られないようにしないと)
ただでさえ住んでいたアパートが火事で焼けて、更に保護者である私が危険な目に遭ったことを知ったら。どれだけ不安になるだろう。
レン王子には弟に話さないように釘を刺して置かないと。
弟と言えば、今はホテルの部屋にいるはず。たぶんご飯を食べてないだろうな、と予想した私は近くのディリーストアに入るとレン王子にかごを持たせた。
「なんだこれは?」
「さっきろくに食べなくてお腹が空いたでしょう?私がおごりますから、好きなものを入れちゃってください」
「……………」
レン王子は何を言ってるか本気でわからない様子だけど、私は構わずに彼にお弁当やサンドイッチを見せた。
「これ、野菜たっぷりだそうですよ。こちらはバジルチキンのオーロラソース。こちらは卵がメインです。どれがいいですか?」
「…………」
「あ、それともあなたにはチーズバーガー……」
「バジル」
選ばないなら勝手に選びますよ、と棚にあるハンバーガーに手を伸ばしたところで即答。たぶん着ぐるみの中でぶすくれてる。やっぱりピクルスは嫌なんだな、とこっそり笑っておいた。
「あの……弟達には今日あったことは内緒にしてくださいね。心配かけたくないので」
「別に、話す義務はない」
レン王子から予想通りに淡々と返されて、その無関心さに今だけは感謝した。



