クリスマスプレゼントは王子さま





「ぐえっ!」


うめき声からほどなくドサッという音が聞こえて、振り向けば間宮さんと一緒にいた男性が手をぶらぶらさせていた。

足元には最後の覆面男が見事に失神していてピクリとも動かない。


「失敬。大きなネズミを退治しただけですから、お気になさらずに」


明るめのアッシュブラウンの髪を自然に流した男性は、細身で優しい顔つき。流行りらしいファッションに身を包んだ彼は今どきの若者に見えるけど、にこやかな割には一瞬見せた眼光の鋭さに思わず身がすくんだ。


「翠様、これは皐月(さつき)と申します。主にレン王子の護衛を担当致しておりますので、以後お見知りおきを」

「あ、よろしくお願いします」


皐月と呼ばれた男性にペコリと頭を下げると、彼はニコッと笑って「よろしくね」と手を軽く挙げた。ずいぶんフレンドリーな人だ。


「間もなく警察がまいりますが、対応はこちらにお任せください」

「え? でも……私も一応証人では」


間宮さんが出した言葉に反論しようとすると、にこやかな皐月さんが間に入り込んだ。


「ダメダメ! あなたは一応レン王子の恋人って立場なんだから。一般人と同じ扱いになるはずないでしょう。良いから間宮に従ってくださいな」


一見にこやかだけどまったく笑ってない皐月さんに圧力をかけられ、不本意ながらも不承不承頷くしかなかった。