そしてレン王子は突然立ち上がると、こちらへ向けてすたすたと歩いてくる。
覆面男の一人が大きな刃物で「近づいたらぶっ刺すぞ!」と脅すけど。レン王子の歩みは止まらない。
強い目的を感じさせる行動に、ま……まさか助けに来てくれた……?あの無感情な人が、と期待に胸を踊らせて見詰めれば――
彼は、スッと横を通り過ぎた。
「え?」
「は!?」
思わず覆面男と声をハモらせてしまうほど、レン王子の突飛な行動の目的は……隣のテーブルに置いてあったホットコーヒーでした。
彼は包み紙を破ると、ストローを挿して両手で紙コップを持ちコーヒーを飲みだした。
「な、何してやがるてめえ! よくも仲間をシメやがったな!」
覆面男の一人が肩を怒らせて着ぐるみのレン王子に近づくと、次の瞬間その体が宙を待ってガラスに叩きつけられ――そのまま気を失った。
そして、レン王子は両腕をテーブルに着いて立ち上がると、次の瞬間には床を蹴ってあっという間にカウンターにいる覆面男のリーダーに近づいた。
当然、リーダーは体勢を変えて着ぐるみの襲撃に備える。手にした大振りのナイフを構えると、レン王子に向かって突き出した。
それをレン王子はあっけなく交わすと、次の攻撃であるパンチを繰り出した腕を掴んだまま相手の足を払い、リーダーの身体を床に叩きつけた。



