覆面男たちは売り上げだけで足りないのか、お客さん達からも「集金だよ」と言って財布や貴重品を奪いだした。
「ふぇ……」
「勝(まさる)、いい子だから泣かないで」
近くでまだ5、6歳くらいの男の子を連れた女性が、息子を庇うように抱きしめていた。男の子は今にも泣きそうで、しゃくり上げ始めてる。
(翼……海……風花)
泣いている子どもを見ると、つい弟たちを思い出してしまう。
だから、ついつい声をかけてしまっていた。
「大丈夫、お姉ちゃんが何とかするから」
奴らの目を盗んでこっそり声をかけると、男の子はきょとんと私を見上げた。
「おばちゃん、せいぎのみかたなの?」
「おばちゃ……」
幼い子どものストレートな言葉は、サックリと胸に突き刺さるけど。今は落ちてる場合じゃないと自分に言い聞かせた。
「私が囮になりますから、ひとまずカウンターの中に逃げ込んでください。従業員用のドアがあるはずですからそこに入ってすぐに見える、赤い非常用のベルを押してください。本部に直接繋がるホットラインに通じますから」
このハンバーガーチェーンは違う支店でアルバイトした経験があるから、店が違えど構造や仕組みは一緒のはず。それを思い出しながら説明すると、はじめは驚いていた女性はコクンと頷いた。
今、一番近いのはカウンターにどっかり座る主犯格の男。私からの距離は2m。女性と男の子の距離は3mほど。私が飛びかかってがっちり抱きついて、ダッシュで走ってカウンターに逃げ込むまでたぶん10秒……余裕を持って15秒はあればいい。
ジリジリとリーダーらしい男に近づいた私は、男に飛びかかってすぐに「走って!」と叫んだ。



