「……あれ。 食べないんですか?」
「…………………」
ファストフード店内のテーブルで。着ぐるみのトナカイは両手を膝に乗せた格好のまま、より一層濃い影を背負って固まってる。
(あれ? おかしいな。ピクルスが食べたいんじゃなかったの?)
レン王子のハンバーガーには特別にピクルスを十倍入れて貰った。ハンバーガーからはみ出すほどのそれを、レン王子は大好物ではなかったのかな?
「ピクルス……お好きではなかったんですか?」
「……嫌いだ」
「え゛!?」
ボソッと呟かれた言葉に、耳を疑った。
「……この世から消滅すればいい」
「は? そんなに嫌いなんですか」
世界から消滅を願うって、どれだけ嫌いなんですか。
というか……
「す、すみません。てっきりピクルスが好きだと思ってお誘いしましたが……ごめんなさい!」
フリーズしたままの着ぐるみのレン王子に、テーブルに額がつくほど頭を下げたけれど。
でも、と私はすぐに頭を上げてレン王子を見た。
「好き嫌いはダメですよ、栄養が偏っちゃいますから。ピクルスだって工夫をすれば美味しく食べられますよ。今度私がアレンジしてみせますからね」
なぜか、自分から強気の宣言をしていた。



