「あ……やっぱりそうですか」
(そうですよね……私なんぞにこんな身分も血筋もいい美形がホレるなんて……一瞬でも勘違いしてた五分前の自分を殴りたい)
ははは……と虚しく乾いた笑いを浮かべた私に、レン王子は続けた。
「無論、一方的に利用することはしない。あんたがこの役を引き受けるならば、新しい住居が決まるまでのホテル代はこちらが負担する。身辺警護や生活用品の準備まで……新しい生活に至るまでの総てを責任を持って用意する」
「え……ええっ!?」
今度こそ、目を見開いて驚いた。アパートが焼け落ちて家財道具はほぼ失ったのは確かだけど、そもそもそんなに大した物は置いていなかった。 レン王子のアドバイスで貴重品や大切なものは粗方身につけていたし。
私たちの新しい生活用品なんて。お金が貯まれば古道具屋やリサイクルショップで揃えるので十分なのに。
「あ……あの。新しいアパートを捜していただくくらいは……ですが。何もそこまでは」
「ギブアンドテイクだ。オレはあんたを利用する。だから、あんたも新しい生活の為にオレを利用すればいい」
レン王子は余計な慰めや誤魔化しはせずに、どこまでも正直に言い切る。清々しいまでの偽りのなさに、逆に笑いが込み上げてきた。



