「宿泊先ならばいいホテルを知ってる」
私の考えを見抜いたような言葉にドキッと心臓が跳ねた。
「でも……あまり持ち合わせが無いので」
「心配要らない。この事態がオレ達の責任である以上、こちらに任せろ」
「え?」
トナカイの言ってる意味がわからないまま、車に押し込められて向かった先は――
市内で一番高価で国内でも有名な一流ホテルだった。
「ひええ~広い!」
「でっけえ! 布団もフカフカだぜ」
弟たちだけでなく、妹の風花も頬を染めて控えめに喜んでた。そりゃ、足首が埋まりそうなほど長い毛足の絨毯や、キラキラのシャンデリア。大理石のロビーやら何やら。見ただけで目がつぶれそうな高級品の数々なんて、お目にかかる機会なんて無かったんだから。まだ小学生の子どもが無邪気に喜ぶのも無理はないよね。
だけど……
私は、肩を怒らせてトナカイを睨み付けた。
「こんな高そうなホテルにお世話になる訳にはいきません! 好意はありがたく思いますが……もっと分相応なホテルに移らせていただきます」
子ども達に聞こえないようにひそひそと抗議をした。弟達の期待を裏切るのは辛いし申し訳ないけど、いくらなんでもロイヤルスイートルームなんて泊まれる訳がない。ひとり一泊私の月収のいくら分なのか……考えただけで頭が痛くなる。



