「大丈夫、何とかなる……じゃなくって、私が何とかする。だから、おばあちゃんはそこのお店に入って暖まってて」
房江おばあちゃんの肩に自分の首に巻いてたマフラーをかけると、にっこり笑って近くの喫茶店に入れようとしたけど。行く手を阻んだのは一台の乗用車。
「え、なにこの車」
ムッと来て避けようとすると、唐突にトナカイが開いたドアを指差した。
「乗れ」
「え?」
「ご老女の体を心配するならこれに乗せろ。暖房は効いている。風さらしよりはマシだろう」
「……でも」
言われてハイそうですか、と素直に頷けるほど単純にはなれない。
確かにトナカイとサンタはまったく知らない仲じゃない。一緒にお風呂へ行ったりご飯を食べたりもした。
けど、それでもたかが二時間かそこらの付き合い。名前も……顔すらろくに知らない相手の車に体の弱った大切な人を預けるには、信頼度が足りない。
別に犯罪に巻き込まれると決まった訳ではないけれど。おばあちゃんを大切に思うなら、知らない人に彼女を託すべきじゃない。
「ご親切ありがとうございます。でも、大丈夫です。私たちで何とかしますから……」
おばあちゃんを支えながら、泣きそうな子ども達と一緒に喫茶店に向かおうとしたけど。
トナカイはやっぱり前に立ちふさがり、デカイ手を私に向けて差し出してきた。



