「……好きにしろ」
トナカイのぬいぐるみ越しに聞こえた声は、やっぱりくぐもっていて。それを聞いたサンタさんは耳に付けたイヤホンみたいなもので素早く何かを呟いた。
「レンはここで彼女達を守っていてください。SSは変わりはありませんから。5分後に迎えが来ます」
「わかった、行け」
「では、しばらくお待ちを」
サンタさんは軽く頭を下げると、翼と共に先を急ぐ。後に残された弟達は不安げに私を見上げた。
「姉ちゃん……どうしたの? 帰らないの?」
「ちょっと待っててね。何が起きてるか翼兄ちゃんが確かめてるだけだから」
「……でも……なんか黒い煙がいっぱい……あっち……家のある方だよね?」
「……そうだね、けど。きっと大丈夫だよ」
言いながら、風花がカタカタと震えているのに気づいた。人一倍感情に敏感な妹は、いち早く異常に気づいて怯えているんだろう。
その場で膝を着いた私は、妹をギュッと抱きしめた。
「大丈夫……きっと大丈夫だから」
風花達に言い聞かせてはいたけれど、実際は自分に言い聞かせ、そう思おうとしていたのだと思う。
もしも嫌な予感が的中していたら……と思うと。明日からどうやって生活しよう、という焦りと不安で胸がはち切れそうだった。



