(今日でお別れ……だけど。これだけ愛してもらえた。これで十分です。ありがとう……レン王子)


綺麗な寝顔を見るのも最初で最後。このまま立ち去ろうと着替えを取り出していると、コンコン、とドアノックがされてからベッドルームにヒョイと顔を出したのはアベルさん。


「おはよう。昨夜大変な目に遭った上に、野獣に喰われて疲れてるところでごめんね。そろそろ支度をしなきゃならないから」

「え、支度って……何のですか?」

「ヒミツだよ~子ども達も出席するし、彼らも支度が済んでるから早く早く!」

「え、あの……」


アベルさんは私の背中を押してグイグイ進ませようとするけれど。ちらっとベッドの方を見てなぜか微笑んだ。


「……レンが誰かのそばであれだけ安心して眠れるなんて、初めて見たよ」

「え?」

「あいつはガキの頃から眠りが浅くてね。どんなちっちゃい物音でもすぐ対処出来るような習慣がついてたんだ。なのに今はあれだけ深く眠ってる……僕が見てきた15年で初めだよ。きっと君のお陰だね」