「は、離してください! 私はあなたに迷惑ばかり……これ以上はたくさんです。自分は自分で護……っ」
それ以上言葉を出すことは許されなかった。
なぜなら、レン王子のキスで唇が塞がれていたから。
その直後にレン王子が私を抱えて飛ぶと、足元のコンクリートが派手に弾け飛ぶ。数度に渡る銃撃をすんでのところで交わしつつ、レン王子は味方に指示を出しながらコンテナの陰に走り込んだ。
相手の死角に入った上にレン王子の部下が周囲を護っている。
レシーバーから彼に指示を乞う声が聞こえて、レン王子は短い指示を与えた。
「B2は右手から回り込め。B3は上に移動しつつ、先行し哨戒を継続。死角に入るよりもこちらが動きやすい環境を確保することに注意しろ。南西方向に備蓄されている薬品は無水エタノールだ。撤退用の工作も忘れるな」
ほんの少しだけ緊張が解けて腰を落ち着けた私に、インカムで指示を終えたレン王子がこう告げた。
「おまえが手を汚す必要はない」
「で、でも……私は……あなたに迷惑ばかり」
「そうではない。オレにすれば逆だ」
私の止まらない涙をレン王子は指先でぬぐい、複雑な顔をした。
「巻き込んだのも、手放せなかったのもオレだ」
「え?」
何を言われたのか理解できなくて彼を見上げると――
レン王子の綺麗な琥珀色の瞳が、私を見つめていた。
「おまえは――オレが護る。何があってもだ」
レン王子がそう告げた刹那――ドン、ドンと銃声が轟いてすぐ近くに着弾した。



