壁づたいにゆっくり、ゆっくり慎重に移動する。薄暗いから視覚はあまり頼りにならず、つま先で足場を確認しながら進んだ。
呆れるほどの時間をかけてようやくたどり着いた先は……いろんな古いれた機械類が山積みになった工場? 産廃工場かなにかなのかな。
ようやくさっきの崖からフェンスのある場所に移動すると、周りは深い森に囲まれた場所だとわかる。かなり遠くに町の灯りがあることから、ここは町から相当離れた山にある土地らしい。そう確認できた時、いきなり「誰だ!」と見知らぬ男が駆けつけてきた。
見つかった! と慌てて物陰に隠れようとしたけど。急いだせいか足場を確認し忘れてその場で足を引っかけ、転んでしまった。
「あんたは……! いつの間に小屋から出やがった。さっさと戻れ!」
いかつい男は私の手を掴むと、強引に引きずってあの小屋に戻そうとする。いくら暴れて抵抗しても、所詮鍛えた男には敵わない。
だけど……。
いきなり男が呻いたかと思うと、そのままよろめいてドサッとその場で倒れ込んだ。何が起きたか理解できないでいると、聞き慣れた声が鼓膜に届いた。
「翠様、お怪我はございませんか?」
「……間宮さん!」
ここ数日ですっかり馴染んだ人の姿を確認して、安堵から腰から力が抜けるとへなへなとその場で座り込んだ。
「遅くなって申し訳ありません。位置を特定するのに手間取ってしまいました」
「い、いえ……来ていただけただけでも充分です。私なんかのために危険な目に遭わせてすみません。後は何とか自分で帰れますから」



