今はもう、おそれも不安もなかった。
でも、やっぱりドキドキしてる。
だって、嬉しくて幸せでも、恥ずかしいのは恥ずかしいわけで。
「照れてる千佳さんも可愛いよね」
「可愛くないですよ」
「可愛くないこと言う千佳さんも、それはそれで可愛いから」
先生はどこまでも寛容だった。
そして、どこまでも果てしなく優しかった。
ガツガツとか、ガウガウとか、そんなギラギラした感じとはまるで無縁な保坂先生。
慎重で、丁寧で、繊細で。
心のひだを優しく撫でながら、そっとそっと近づいてくる。
冷静だけれど、うっとりするほど優しい保坂先生の愛し方。
(先生って、やっぱりぜんぜん違うんだ)
私が知ってる男の人たちは、自身の快楽という目的のために、私の体に触れていた。
でも、保坂先生は決してそういう感じではなくて。
むしろ、自分の欲求はとりあえず置いておいて、私に優しくすることに注力しているような?
先生の余裕は、怖がりの私を安心させる。
けれども同時に、甘く切なく追いつめもした。
(ああ、こんなことって……)
その手のひらから、指先から、溢れるほどに伝わる想い。
先生の限りない優しさが、私をどうしようもなくダメする。
鼓動が甘く高鳴るほど、儚く失われる理性。
とろとろに甘やかされて、心も体もふわふわしてる。
(なんかもう、私が私じゃないみたい)
こんなにも明け透けで、無防備で。
本当、飼い主に溺愛される幸福な飼い猫だ。
思い切りひっくり返ってお腹を見せて、撫ででもらって、可愛がられて。
安心して、信頼して、心も体もまるごと全部委ねている。
それが、とても…………心地よい。
「千佳さん?」
静かで穏やかな先生の声。
先生は奇妙な上から目線で煽るようなことは絶対ないし。
まして、的外れな愛撫で「ここがいいんだろ?」などとドヤることなどあり得なかった。
私はただもう、先生が痛くはないかと気遣ってくれるたび、素直に全力で頷いた。
演技をする必要なんてどこにもない。
それは本当。
けれども、白状すると――必要も何も、私には演技をする余裕なんてまるでなかったのだから。
それが、本当のほんとう。
どんどん理性を失って、ずるずるダメになっていく。
そんな自分を――先生に見られてる、知られてる。
「千佳さん」
先生の冷静さは残酷なほど魅力的で、私をいっそう熱く切なく追い詰めた。
(もう、どうしようもない……)
先生が、どんな私でも私だと言ってくれたから。
先生が、ありのままの私でいいと言ってくれたから。
だから――、私は抗うことを諦めて、あっけなく理性を手放した。
(もう、どうしようもないくらい……保坂先生が、好き……)
本当は言葉でちゃんと伝えたいのに、伝えなきゃなのに、とてもじゃないけどできなくて。
私は苦し紛れに、先生の手をぎゅっとぎゅっと強くにぎった。
「千佳さん、可愛すぎ」
「可愛く、ないですよ?」
「頑固な千佳さんもやっぱり可愛い」
「もう、先生はそうやって……」
「素直に認めて楽になればいいのに」
先生はいつもの調子で穏やかに笑うと、優しいキスをひとつくれた。
「優しすぎです、先生は」
「そうかな?」
「そうですよ」
「だとしても――」
その声は静かだけれど、切ない熱を帯びていて――。
「誰にでも優しいわけじゃない」
(先生……)
「君だから、でしょ?」
そのキスは、とろける甘さと優しさで私の心をいっぱいにした。
(先生となら、きっと……きっと、大丈夫)
でも、やっぱりドキドキしてる。
だって、嬉しくて幸せでも、恥ずかしいのは恥ずかしいわけで。
「照れてる千佳さんも可愛いよね」
「可愛くないですよ」
「可愛くないこと言う千佳さんも、それはそれで可愛いから」
先生はどこまでも寛容だった。
そして、どこまでも果てしなく優しかった。
ガツガツとか、ガウガウとか、そんなギラギラした感じとはまるで無縁な保坂先生。
慎重で、丁寧で、繊細で。
心のひだを優しく撫でながら、そっとそっと近づいてくる。
冷静だけれど、うっとりするほど優しい保坂先生の愛し方。
(先生って、やっぱりぜんぜん違うんだ)
私が知ってる男の人たちは、自身の快楽という目的のために、私の体に触れていた。
でも、保坂先生は決してそういう感じではなくて。
むしろ、自分の欲求はとりあえず置いておいて、私に優しくすることに注力しているような?
先生の余裕は、怖がりの私を安心させる。
けれども同時に、甘く切なく追いつめもした。
(ああ、こんなことって……)
その手のひらから、指先から、溢れるほどに伝わる想い。
先生の限りない優しさが、私をどうしようもなくダメする。
鼓動が甘く高鳴るほど、儚く失われる理性。
とろとろに甘やかされて、心も体もふわふわしてる。
(なんかもう、私が私じゃないみたい)
こんなにも明け透けで、無防備で。
本当、飼い主に溺愛される幸福な飼い猫だ。
思い切りひっくり返ってお腹を見せて、撫ででもらって、可愛がられて。
安心して、信頼して、心も体もまるごと全部委ねている。
それが、とても…………心地よい。
「千佳さん?」
静かで穏やかな先生の声。
先生は奇妙な上から目線で煽るようなことは絶対ないし。
まして、的外れな愛撫で「ここがいいんだろ?」などとドヤることなどあり得なかった。
私はただもう、先生が痛くはないかと気遣ってくれるたび、素直に全力で頷いた。
演技をする必要なんてどこにもない。
それは本当。
けれども、白状すると――必要も何も、私には演技をする余裕なんてまるでなかったのだから。
それが、本当のほんとう。
どんどん理性を失って、ずるずるダメになっていく。
そんな自分を――先生に見られてる、知られてる。
「千佳さん」
先生の冷静さは残酷なほど魅力的で、私をいっそう熱く切なく追い詰めた。
(もう、どうしようもない……)
先生が、どんな私でも私だと言ってくれたから。
先生が、ありのままの私でいいと言ってくれたから。
だから――、私は抗うことを諦めて、あっけなく理性を手放した。
(もう、どうしようもないくらい……保坂先生が、好き……)
本当は言葉でちゃんと伝えたいのに、伝えなきゃなのに、とてもじゃないけどできなくて。
私は苦し紛れに、先生の手をぎゅっとぎゅっと強くにぎった。
「千佳さん、可愛すぎ」
「可愛く、ないですよ?」
「頑固な千佳さんもやっぱり可愛い」
「もう、先生はそうやって……」
「素直に認めて楽になればいいのに」
先生はいつもの調子で穏やかに笑うと、優しいキスをひとつくれた。
「優しすぎです、先生は」
「そうかな?」
「そうですよ」
「だとしても――」
その声は静かだけれど、切ない熱を帯びていて――。
「誰にでも優しいわけじゃない」
(先生……)
「君だから、でしょ?」
そのキスは、とろける甘さと優しさで私の心をいっぱいにした。
(先生となら、きっと……きっと、大丈夫)



