求めあう感じが嬉しくて、幸せで。高鳴るときめきに、たまらない気持ちになって、私はつないでいないほうの手で先生のパジャマの袖をぎゅっと掴んだ。

足元ではグレちゃんがわざと体をこすりつけるようにして、いったりきたりちょろちょろしている。そうかと思ったら、まるでキスを交わす私たちを邪魔するように、彼女がソファーに飛び乗ってきたものだから。

「グレのやつ……」

「可愛いですね、グレちゃん」

私たちは名残惜しくも唇を離して、ふふふと小さく笑い合った。

「一緒に暮らすとなったら、君の部屋も必要になるな」

「え?」

私の物なんて限られた衣類と本くらい。引っ越しだって、きっと半日もかからないと思うのに。

「兄と連絡をとって、北側のあの部屋を片付けさせるから」

「そんな、申し訳ないですよ。私なんかのために」

私がふるふると首を横に振って遠慮すると、先生は真剣な顔をして言った。

「“私なんか”とは聞き捨てならない。そんな言い方はよしてくれないか。僕にとって君は一緒に暮らす大事なパートナーなのだから」

(先生……)

すごく嬉しかった。でも、なんだか叱られた子どもみたいにシュンとしてしまって……。そんな私の頭を先生はよしよしと撫でてくれた。

「部屋は使ってこそ。ここに住まう君にあてがって当然でしょう。だいたい、いつまでもあのまま放置というわけにはいかないのだし。ちょうど夏兄(なつにい)――兄と連絡をとらなきゃならない用もあるから」

「はい」

私が素直に頷くと、先生はほっとしたような笑みを見せた。

「今夜は、枕を持って僕の寝室に集合すること」

「えっ……」

途端に心臓がどきんと跳ねる。そりゃあ、当然の流れといえばそうなんだけど。やっぱり、ドキドキする……。それに、照れくさくてどんな顔していいかわからないし、なんか……どうしようっ。

「あの、えーと……集合ということは、グレちゃんも一緒でしょうか?」

「グレには、今夜は遠慮してもらうつもりです」

私のアホな質問にもきちんと答える保坂先生の律儀なこと。

「もともと和室は客間だから。君はもうお客さんじゃないでしょ」

先生の優しい口調が、胸に熱くじわりとしみる。

「お留守番ネコでもない。いつまでもふざけてネコ扱いするのもなんだが、それでも敢えてそうするならば――今はもう、君は僕の大切な愛猫なのだから」

先生ってばもう、こんな台詞を臆面もなく、しれっとさらっと言ってのけちゃうから。だからもう、嬉しすぎてもう、余計にどうしていいかわからなくなっちゃうじゃない。

「千佳さん。わかってくれた?」

「…………にゃお」

「よろしい」