白衣とエプロン①恋は診療時間外に

ところで――。


「あの、先生はどうしてこんなところに……?」

「ああ、近所なんですよ、僕のうち」

「ええっ」


ってことは、先生と私ってご近所さんってことじゃない!?


「わ、私もです。私のうちもこの辺なんです」

「それは知らなかった。僕は最近越してきたばかりなんです」

「そうだったんですね」


そっか、だからスーパーやコンビニで鉢合わせすることも見かけることもなかったんだ。

まあ早速こうして遭遇したわけだけど……。


「ところで、清水さん」

「はい」

「立ち入ったことを聞くようですが、さっきのあれは――」


先生は少しだけ遠慮がちに、だけどいつもの淡々とした調子で聞いてきた。


「彼氏、ですか?」

「“元”です!!」


思わず無意識に語気が強くなった。

私ってば何をむきになってるんだろ……。


「元カレということは、つまり清水さんのうちを知っているということですよね?」

「そうなりますけど」

「そう、ですか……」


先生は何やら思案するように目を伏せた。


「先生……?」

「送らせてください。とりあえず」

「えっ」


先生の申し出はすごく嬉しくてありがたかった。

でも、これ以上面倒をかけるのは本当に申し訳なくて。


「私のうち、本当に近くなので大丈夫です。ありがとうございます」

「でも、まだその辺にうろうろしているかもしれないし」

「それは……」


そう言われると……急に怖くなった。