掴まれた腕を押し倒され、組み敷かれベッドに沈み込む。
私は彼を見上げながら、侑李が言った“答え”について考えていた。

確か、これも有名な人の名訳からの言葉だ。
夏目漱石と同じくドイツに留学していた……そうだ、森鷗外。
彼の名訳が、ゲーテのファウストの『時よ止まれ、汝は美しい』だ。

小説好きがココで役に立つとは思わなかった。



「蒼井。俺と結婚してくれないか」



彼の言葉に、一瞬目を見開き顔を歪ませる。
嬉しくて息が止まりそうだ。
滲む視界の中、迷うことなく私は「はい」と返事をした。



「不細工だな」



クツクツと喉の奥で笑いながら、愛ある毒を吐く侑李。
言葉は魔法だ。愛しい人の言葉が、私を“不細工”にも“綺麗”にもさせる。

私はこれから先の未来も、侑李の傍にいたい。


幸せ過ぎて目尻から涙が零れ落ち、泣き笑いをしていると、これ以上ないくらい優しい笑みを浮かべ、侑李の顔が近づいてきた。

ある予感を感じ、私はそっと目を閉じる。