愛しのカレはV(ヴィジュアル)系

「エミリー…私、後ろで見ようかな…」

さゆみの耳元にそっと囁いた。



「だめだめ。
またさっきの子達になにかされたらどうすんの?
一人にならない方が良いって。」

「あ、そっか…」

すっかり忘れてたけど…そうだよね。
またあんなことされたらいやだよね。
ふと、膝に貼った絆創膏が目に入った。



(仕方ないね。今日はここで見よう。)



なんだか落ち着かないけど…
でも、それはみんなそうみたい。
さっきからずっと会場がざわめいてる。
それにしても、さゆみも相当気合が入ってる。
瑠威のことは諦めたはずなのに、まだ化粧直しが終わらないよ。
私はてかてかを直しただけだけど、もっとちゃんと直した方が良いのかな?



そんなことを考えてると、急に聞き覚えのあるSEが流れ始めた。
会場からは、女の子の悲鳴みたいな声が上がり、会場に緊張が走った。
そして、ステージの袖から最初にオルガさんが、そして、ケインさん、クロウさんが現れて、場内は黄色い歓声に包まれた。
うわぁ、オルガさんがすっごく近い…!
なんだか恥ずかしくなってきたよ。
ライブ中、どこを見てたら良いんだろう?



「長い間待たせて、すまなかったな!」



私が混乱から覚めないうちに、押さえた声とともに瑠威がステージ中央に駆けてきた。
それと同時にイントロが始まった。
客席は、甲高い女の子の歓声に包まれ、すでに興奮状態。
キラさんとハルさんは抱き合って涙を流してて、なんとさゆみまでが同じように泣き出して…
しかも、それは三人だけではなかった。
会場内を見渡せば、あちこちで泣いてる人がいた。
まぁ、確かにシュバルツのライブはものすごく久しぶりだし、今日のイベントに出るってことも秘密だったからみんな驚いたんだろうけど…
そんな人達を見てたら、私までなんだか涙が出て来てしまって…
完全な連鎖反応だ。
異常とも言える大盛り上がりの中、シュバルツのライブが幕を開けた。