「夏美ー?どうしたの?料理?」


キッチンに立って作業をしていると、2階からおりてきたお母さんに不思議な顔をされた。


「そうだよ!とっ、友達と食べるの。」


“友達”と言おうとしたら、噛んでしまった。


・・・実はハルのために作っている。


お母さんには彼氏ができたことまだ言ってなかったから。


お母さんごめんね、嘘ついて。


心の中で謝りながら、作業を続ける。


「なんていう名前〜?」


お母さんがニコニコしながら聞いてきた。


多分彼氏だってことわかっているだろう。


だから私は言ってやった。


「お母さんって意地悪だね。」


するとお母さんは、さっきとは違う優しい笑みを浮かべた。


「・・・夏美、最近よく笑うようになったね。絵にしか興味を持たなかった夏美が、友達を作って笑顔を増やしてる。お母さんね、すごく嬉しいの。お父さんも喜んでたわ♪」


お母さんがそんなことを思っていてくれていたなんて。


お母さんの思いを聞いて、心がほっこりした。


家族っていいね。