本当に楠森が幸せになってくれたらそれでいいと思っていたことは、嘘じゃなかったけど。 正直、苦しさもゼロではなかった。 東条は、俺にはじめて話しかけてくれた女子で。 俺が周りとは違う人間だって分かってても、なんの壁もつくらず笑顔で接した人間だ。 そんなやつに恋愛感情を持つなって言うほうが、きっと難しかった。 だから、痛いほど分かったんだよ俺は。 凛夏の気持ち――。