「霞ちゃん?どうしたの?」
 くりくりとした目を心配そうに細めて覗きこまれた。
 「だいじょうぶだよ」
 「うそだぁ。ぼーっとしてるよ?」
 むぅ、と口をすぼめて自分の額と私の額に手を当てる。
 「熱は、なさそうだけどなぁ……」
 あぁ、かわいい。やさしくてかわいいこの子――碓氷ひなた(うすい ひなた)は私にはもったいなさすぎる友達だ。
 「なんかあったらすぐ言うんだよ?」
 ひなたはふわふわしているようで保健委員長をつとめるしっかり者の一面も実は持っている。でも……
 “なんか”なら、もうあったよ。
 登校途中に知らない男の子に逢った。ただ、それだけ。なのに、なんでこんなに動揺しているんだろう?

 『今度、お礼するね』って。今度があるのかな?って。期待までしちゃってさ。あわゆくば、また逢いたい。って恋する乙女か、私は!恋する……乙女って……。

 自分でいれたツッコミに自分で赤面する。