「私ね、社長からプロポーズされているのよ。」
「ええっ?!!」
「今度は本当に知らなかったのね」
郁美はあまりの驚きに大口を開けて驚いたもののその口を閉じられなかった。
珠子は、大袈裟に驚かなくてもと郁美の口に手を当てて塞ごうとしたが、郁美はその手を払いのけた。
「それっていつの頃なの?プロポーズされたのって。そんな個人的な付き合いをしてたなんて知らなかったわ。」
「いきなり呼び出されてのプロポーズで私も驚いたわ。それに、社長とは食事デートをしただけなんだけど、洋介が残業させるものだからそのデートもあまり出来なかったんだけど。」
洋介が残業を強制したのは社長の俊夫とのデートを邪魔するものだと分かると郁美は呆れてしまった。大の大人が何やっているのかと大声を出してしまいたくなる。
「社長との仲を邪魔する為の残業なのね!部長ってすっごい嫉妬深いのね!」
「残業は私の苦手なパソコンを克服する為の勉強時間でもあったのよ。営業部のいろんな資料を作りながら操作を学んでいくの。お蔭で随分パソコンにも慣れてきて私一人でもかなり操作できるようになったのよ。」
珠子がまるで好きな人の話でもしているかのように嬉しそうな表情をしていることに郁美まで顔がほころんでしまう。
珠子の幸せな微笑みが郁美に移ってしまったような気分だ。
洋介の話をする珠子はこれまで見たことのない笑顔を見せてくれる。



