憂鬱な午後にはラブロマンスを


周りに誰もいない事を確認すると珠子は少し躊躇いながらも郁美の顔を見ながら話を始めた。
それは洋介とのことから話は始まった。


「実はね、遠藤部長とは私が大学生の時に結婚していた時期があるの。」


珠子はその話を聞いた郁美が驚きの表情をしていない事に逆に驚いた。郁美は淡々と珠子の話に聞き入っていた。


「でもね、部長との結婚生活は長続きしなくてその後に離婚してしまったのよ。」


この時も郁美は驚きを見せずに珠子の話をしっかり聞いていただけだった。
そんな郁美を見て珠子は、郁美がこの話を洋介から聞いたのだと思った。


「聞いたのね。洋介から。」

「ごめんね。本当は珠子の口から聞きたかったけど、社長の車に乗って行ったと聞いたものだから。」

「社長・・・そうね。それもバレているんだ。」

「部長は詳しい話は珠子から聞いてほしいって言ってたわ。だから、それ以上は何も知らないの。」


郁美は珠子が最近社長の俊夫に呼び出されているのは仕事上のものではないと分かっていた。

社長が平社員の、それも利益を上げる営業でもなく、経費を節約する経理でもない、普通の事務社員に対し社長室へ度々呼び出すはずはない。

そうなればプライベートな呼び出しと考えるのが普通だと思った。
プライベートならば恋愛が絡むと考えるのがこれまた普通のことだろうと思った。