憂鬱な午後にはラブロマンスを


廊下へ出た二人だったが、そこにも他の部署の社員達の姿がチラホラと見えていた。

話を聞きだそうにも郁美はここでは完全に無理だと諦めた。

すると、大きなため息が出てしまうとそんな郁美を見て珠子が笑いだした。


「なあに? 何が可笑しいの?」

「私より郁美の方が悩みが大きいの? 随分思いつめた顔してるわよ。」

「そうよ、珠子の所為で私まで悩んでいるのよ。」

「ごめんね・・・・心配かけて。」

「まだ、話せそうにない?」


珠子は首を横に振ると迷いのない瞳で郁美を見た。
その瞳に郁美は珠子が何かを悟っているかのような表情に見えた。


「郁美に聞いてほしいことがあるの。でも、ここじゃ・・・どこか場所ないかな?」

「外へ出る?」


珠子は郁美に誘われるように玄関ロビーへと向かった。
すると、他の部署の社員達に遊びに出るのかと声を掛けられた。


「俺達も誘ってよ」

「ダメよ。女子だけで遊ぶの!」


適当に言葉を交わしながら彼らの誘いを断って、郁美は珠子と二人だけで外へと出ていくことが出来た。

建物の外に出ると、すっかり夕方の空模様に変わっていた。


「もう夕方なのね」

「明日も晴れそうね」


二人は空を見上げながら少し庭を歩いた。