憂鬱な午後にはラブロマンスを


宿泊旅館に到着すると何とか解放して貰えた珠子は急いで皆のいる部屋へと行った。

今は少しでも俊夫から離れていたかった。

そして、俊夫に呼び出されたことで洋介に誤解を与えたくなくて洋介からも離れようと女子社員の中に埋もれる様にいた。

旅館の部屋割りは既に部署ごとに決まっていて珠子は郁美と同じ営業部の女子と同室だ。既に部屋には皆が集まって雑談をしていた。

今から温泉へ行こうかそれとも食事が終わってから行こうかと話が盛り上がる中、珠子は窓際の壁にもたれ掛かるように座ると窓から空を眺めていた。


「大丈夫?」

「郁美、ごめんね」

「何か言われた?」


部屋には他の女子社員もいる。二人の存在などいないかのようにお喋りに夢中になって騒いでいた。
その様子を見ながら郁美は珠子を廊下へ誘おうとしていた。


「出ない?」

「そうだね」


珠子は疲れ切ったような顔をして体も動きが鈍い。何かショックなことでもあったのかと郁美は珠子が心配で放っておけなかった。