憂鬱な午後にはラブロマンスを


折角決心がついて、俊夫にこの話はなかった事にして欲しいと伝えたかったのに、宿泊旅館へ行くことを条件にキスをされ口を封じられてしまった。

こんなキスに応じたくないのにと思いながらも、俊夫の甘く優しいキスに頭が痺れてしまう。
このままでは流されてしまうと珠子は身の危険を感じた。


「やめて、やめて下さい!」


ここでやめなければ、この人はもっと先を望んでしまうだろう。そう心の中で俊夫に対して危険信号が鳴っていた。それは、車に乗った時から鳴り続けていたがそこから逃げる術がない。


「俺は諦めが悪い男なんだよ。狙った獲物は絶対に逃がさない。」


俊夫が優しい人だと思っていたのは間違いだったようだ。
珠子は俊夫ほど怖いと感じた人はいない。これ以上近づけば火傷程度の傷では終わらないと感じた。

なのにどうすればいいのか珠子は考えてもなにも思いつかなかった。


「でも、私はもう誰とも結婚なんてする気はないんです!」


信じて貰えるかどうか珠子には賭けでしかなかった。
一生一人で暮らすのだとそう主張するしか今を逃れることは出来ない気がした。


「女が一人で一生を終えるのは難しいし無理だよ。君の一生に関わり続けるつもりだ。」


珠子は俊夫がこれほどまでにシツコイ性格だと初めて知った。