「いい訳はそれだけ?」


俊夫のまるで珠子は自分のものだと言わんばかりの態度に、珠子はそんな態度を取られる覚えはないしそれ程の関係でもないのにと怒りが込み上げて来た。


「いい訳じゃなくて、本当のことを言ったまでです。それに、洋介の看病するのに社長の許可は必要ないと思います。私は元妻として洋介の手伝いをしただけですから。」


俊夫は冷たく言い放つ珠子の目に熱いものを感じた。
洋介を語る時の目がまるで恋をしている女の目に見えてしまった。
そんな目を向けられる洋介に嫉妬した俊夫は珠子を抱きしめた。


「社長、やめて」

「社長じゃない。二人の時は俊夫と呼ぶんだ。」

「ダメです。こんなのは。」


引き離そうとしても体格の差があるのだから離れるはずはない。運よく離れた所でこの狭い車内でどう逃げればいいと言うのだ。

珠子はこのまま俊夫のモノになてしまうのかと不安を感じた。

あれほど優しいと感じた俊夫だったのに、狭い車内で抱きしめられキスされると怖くて体が震えてしまう。
洋介のベッドで抱きしめられた時とはあまりにも程遠いものを感じた。