「社長は珠子に興味を持ったようだ。」

「え?」


洋介の言葉を疑うわけではないが、それだと、珠子は社長から口説かれていると解釈してしまう。
興味とはそういう意味で受け取ってしまう、と郁美は信じられなかった。


「珠子の口から話すべきことだろうから、俺はこれ以上は言わないよ。後は珠子本人から聞いてくれ。」

「あの、部長は珠子をどう思っていますか?」

「さあ、どうだろう。どんな答えが欲しい?」

「事実を知りたいです」


郁美の真剣な瞳に嘘は吐きたくなかった。
洋介は今の珠子との関係を変えるには郁美に事実を話すべきではないかと思った。

それに、薄々と何かを感じ取っている郁美を、これ以上は騙し通せないと思っていた洋介は胸ポケットにしまっていた財布を取り出した。

そして、財布の中から紙切れの様なものを取り出すと郁美に手渡した。


「写真?」


郁美が渡されたのは写真だった。財布の中に収まる程度の小さなもので、その写真には珠子の微笑む姿が写っていた。
それもウェディングドレス姿の幸せそうな顔だ。


「珠子は結婚してたの?何で部長がこれを?」

「珠子は俺の妻だったんだ。」

「え?」


郁美は何となく珠子と洋介は何かあると感じていたものの、そんな答えが返ってくるとは予想していなく驚いては何度も写真と洋介の顔を見ていた。