洋介が待てと言って既に1時間が経過していた。
珠子は待っている間にファイル整理をしながら洋介の時間が空くのを待っていた。
それから、待つこと更に1時間。
珠子は堪りかねてもう一度洋介に声をかけた。
すると、洋介は珠子の顔を見るなり眉間にしわを寄せていた。珠子は何故そのような表情をされなければならないのか納得出来なかった。
「見て頂けないのなら私はこれで退社します」
「分かった」
洋介は最初から珠子のパソコンの画面を見るつもりはなかったような態度だ。
珠子が片づけの準備をする頃になると周りのデスクに残っている人は少なかった。
営業で外回りをしている人達は自宅へ直帰する人ばかりで営業部に残っているのは部長の洋介とそれぞれの課の課長くらいなものだった。
机の一番下の引き出しから荷物を取り出し営業部から出て行こうとする珠子の姿を見ていた洋介の目に嫌な光景が写し出された。
営業部の出入口の所に社長の俊夫の姿があった。
明らかに俊夫は営業部へやって来たのだ。珠子の姿を見つけると珠子に手を振って合図をしていた。
珠子は俊夫を見ると少し驚いた顔をしていたが一緒にどこかへと行ってしまった。



