憂鬱な午後にはラブロマンスを


自分のデスクへと戻った珠子は受け取った資料を基にデータ化する準備に取り掛かった。

資料を参考に頭の中で表を思い描きいきなりパソコン入力するというやり方では表が完成出来るのかどうか自信がなく気分が滅入りそうな珠子。

まずは手書きでどのような表を作成すればいいのかを下書きするのが間違いないとペンを手に持ち真っ白な紙を前にして頭を捻っていた。

珠子に遅れて営業部へ戻って来た洋介は必死に作業に取り掛かる珠子を見て何も言わずに好きなように作業をさせていた。

珠子の未熟な技術では人一倍時間がかかるのは最初から承知の上だ。

時間をかけて作業すれば問題は無くなるだろうと思っていた。パソコンだけが仕事ではないのだからと洋介は珠子の補佐の仕事に期待をするつもりでいた。


「粗方の下書きが出来たらそれを見せてくれ」

「分かりました」


珠子はどうすれば分かりやすく数字を確認できるのかと悩みながら下書きに時間を掛けていた。

その珠子の必死な様子を見て洋介は少しだけ笑みを見せていた。

何事にも必死で頑張ろうとするところは昔も今も変わっていないと。

結婚していた時もそうだった。珠子は出来ない事を放置するような女ではなかった。


「部長、見て頂けますか?」

「ああ」


洋介のデスクの隣へとやって来た珠子は下書きした紙を手渡した。

受け取った用紙を暫く眺めていた洋介は赤ペンを取り出し文字を書き足していた。

珠子は何を書かれたのだろうかと覗きこんでいた。