「サッカー部来てくださーい」
「バスケ部入ろうぜ!」
「演劇部興味ありませんかー?」
昇降口を出ると色んな部活が勧誘をしていた。
野球部はかなりの選手不足らしく、選手全員で勧誘に勤しんでいる。
お、おお.....頑張れ野球部......!!
そんなことを思いながら隣を通り過ぎようとすると、野球部から必死の形相で声をかけられた。
「ねえ君!野球とか興味無い!?」
『ごめんなさい、興味無いわけじゃないけど、ちょっと.....』
「興味ちょっとでもあるなら来てみてよ!」
『いや、でも俺テニス部入ろうと思って.....』
「見るだけでも!」
『いや、あの.....』
「お願い!楽しいよ!」
あああああもううるさーい!
俺はテニス部に入るって決めてるんだい!!
こんな時はっきり言えない自分が憎い。
とりあえず逃げるが勝ち。
『あの、すみません!』
そう言って横をすり抜けようとしたがパッと腕を掴まれてしまった。
野球部も廃部の危機で必死なんだろうが、いくらなんでもしつこい!
『離してください!』
「お願い!ちょっとだけでいいから!」
周りは勧誘に夢中で誰も助けてくれない。
『離せよッ......!!』
ナンパされる女子ってこんな気持ちなんだな。そんなことを考えていると、ついつい涙が出てきた。
弱すぎ、俺、かっこわりぃ.....。
「やめてやれ、ちょっとお前しつこいぞ。」
と、急に頭上から声が聞こえた。
野球部から不満の声があがったが、声の主は無言で俺の手を引いて、人の少ないところまで連れていってくれた。
おい。俺はどこぞのヒロインだよ......。
『あの、ありがとうございま.....』
『「あ。」』
お互いの顔を見て、驚いた。
向こうも気づいたらしい。
助けてくれたヒーローは朝の茶髪ニヤニヤ男に瓜二つ。というかたぶん同一人物。
まじか。うん。何も言えねぇ。
「お前朝のドジっ子ハルちゃんかぁ」
『ドジじゃないです!てか、なんで名前知って......』
「そりゃもう二学年の間で有名ですから!」
やべぇ死にてえ。
穴掘ってでも入りたい(2回目)
「とまあ冗談はさておき。.....いや冗談じゃねぇけど。ハルちゃん早くおかえんなさいな。」
冗談じゃないんかーい☆とつっこみたいところだけど一応先輩だから。耐えろ俺。
とゆーか俺はまだ帰らん。
この先輩といると心の俺がノリツッコミをマスターしそうだ。
『いえ、今日はテニス部の見学に行きたくて......』
「おお!まじか。じゃあ案内してやっからついてきな。」
『...........』
俺が何も答えないうちに先輩は歩き出した。
え、いや待って、速い。
足が長い分1歩がめちゃくちゃでかい。
先輩にゆっくり歩いてくれと頼むこともできるが、そんなのは俺のプライドが許さねぇ!!
俺はけして長いとはいえない足をフル回転させて先輩について行った。