ここねちゃんは本当に、純粋に歩の事が好きなのだと感じた。


だからこそ、壊したくなる。


許せなくなる。


「ここねちゃんは、イレカワリって知ってる?」


そう聞くと、強い風が吹いて木々をざわつかせた。


「イレカワリ?」


ここねちゃんは首を傾げてそう聞いて来た。



「そう。魂と心が入れ替わる事」

「あぁ。よく漫画とかにあるやつ? 面白いよね、ああいうの」


ここねちゃんはそう言いほほ笑んだ。


「もし、実際にそういう事が起こったらどうする?」


「実際に? そうだなぁ……困る、かな」


眉を寄せて考えて、ここねちゃんはそう言った。


「でも、非現実的な事が起こったら面白いかもね」


そう付け加えて言い、笑顔になる。


「面白い?」


「うん。だって、実際にはあり得ない事を経験できるんでしょ? それって、少し羨ましいかも」


「羨ましい、か……」


俺は空を見上げて呟いた。


一匹の小鳥が取り残されたように電線に止まっていた。