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大きな荷物をカゴの中に入れ、サンドイッチを頬張りながら自転車をこいでいく。


沙耶の熱はちゃんと下がっているだろうか?


今一番心配なのはそこだった。


通いなれた道をグングンスピードを上げて進んでいく。


朝の澄んだ空気を胸一杯に吸い込むと、心の中が綺麗になっていくようだった。


昨日は夜遅くまでパーティーの流れを考えていたから少し寝不足だった。


だけど、そんな眠気も朝の冷たい空気で覚めていく。


やがて見慣れた建物が見えてきて、俺は立ちこぎで丘の上まで進んでいった。


休日と言う事もあり、病院に来ている患者は少なく自転車用の駐輪所には一台も止まっていなかった。


俺は院内に入り「おはようございます」と受付に挨拶をし、エスカレーターへと向かう。


少しだけ緊張しているのがわかった。


今日は沙耶にとって特別な日だ。


沙耶が喜んでくれるかどうか、とても不安で、そして期待もしていた。


「あら、今日は一段と早いのね」


上の人に話を通してくれた看護師さんが、俺を見てそう声をかけて来た。


「はい、準備があるんで」


「そうよね。あたしたちも、業務の間にお手伝いするからね」


「ありがとうございます。沙耶の体調はどうですか?」


「熱はもう下がっているのよ。昨日から元気が戻ってるし、大丈夫」


そう聞いて、ホッと胸をなで下ろした。


それなら今日のパーティーは決行できそうだ。


「談話室、おかりします」


俺はそう言い、足早に談話室へと向かったのだった。