院内からあまり外へ出られない沙耶の事を考えると、部屋を飾る置物がいいかもしれない。


病室が華やかになれば、気持ちも変わる。


そう思い、沢山並べられている置物を見て行く。


猫や犬の置物だったり、ジオラマのようなものまでなんでもそろっている。


「なにがいいんだろうな……」


俺はそう呟いて頭をかいた。


品揃えが多すぎて沙耶が喜びそうなものがどれなのか、余計にわからなくなってくる。


1人で唸り声を上げて困っていると、若い女性の店員さんが声をかけて来た。


「彼女にプレゼント?」


少しはにかんだ笑顔を浮かべてそう聞いてくる。


店員がつけているピンクのエプロンに、思わずたじろいてしまった。


「ま、まぁそうです」


せっかく『彼女』かと聞いてくれているのだから、そこは否定しない事にする。


「どんな彼女なの?」


そう聞かれて俺は沙耶の顔を思い出していた。


「色白で細くて、一見弱そうなんだけど芯が強く、笑うとエクボができて……」


そこまで行って、ハッとした。


沙耶の事を知らない店員にこんな事を言ってもどうしようもないのに、つい言葉が止まらなくなってしまった。


店員さんは沙耶の外見的な特徴を聞いていただろうに。


店員さんはクスクスと笑って「とても好きなのね」と、言った。


俺は自分の頬が一気に熱くなるのを感じていた。


真っ赤になっている事間違いなしなので、恥ずかしくてうつむいてしまう。