食卓に並んだ料理に、手作りのケーキ。


少し不格好なショートケーキだったけれど、とびきりおいしかったのを覚えている。


手作りだとどんなものでも愛情がこもっていて、とても美味しく感じられるものなんだ。


「俺も賛成」


俺がそう言うと、お母さんはもうその気になっていたようで「沙耶ちゃんはどんなケーキが好きなの?」と、海に聞いていた。


その様子に少しだけ自分の胸が痛むのを感じた。


両親から見ても、俺より海の方が沙耶と近い存在なのだとわかるのだ。


いつもお見舞いに行っているのは海だし、それは当然の事かもしれなかった。


理解していても、いざ目の当たりにするとやっぱり違った。


「歩、お前はおにぎりとかサンドイッチな」


海にそう言われて「え?」と、聞き返す。


「話を聞いてなかったのかよ。


食べやすい物っていても、作って病院まで持って行けるものは限られているから、とりあえずおにぎりとサンドイッチを用意しようって話だよ」


「あ、あぁ。そっか。わかった」


俺は頷いた。


食べやすいかどうかはわからないけれど、持ち運ぶと考えたらそういったもののほうがいい。


沙耶は何が好きなんだっけ?


昔はよく遊んでいたから、沙耶の事なら何でも知っている気になっていた。


だけど気が付けば沙耶との時間は少なくなり、沙耶の好みが変わったかどうかも知らない状態だった。


俺は仕方なく、海に聞いた。


「沙耶は何が好きなんだっけ?」


「おにぎりの具か? 梅干しだよ。昔と変わらない」


そう言われて俺はホッと胸をなで下ろした。


なんだ、変わってなかったんだとなぜだかわからないけれど安心した。