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ハッと目を覚ますと自分の部屋にいた。


俺、庄司海(ショウジ ウミ)は額の汗を手の甲で拭った。


去年の夏の事を夢に見たのはこれで10回目だ。


何度も何度も思い出す、沙耶が倒れた時の事。


幼い頃から体が弱いと聞いていたけれど、沙耶が俺と歩の前で倒れたのはあれが初めてだった。


それまでは男である俺たちと同じように遊んでいたため、どこが弱いのか疑問に感じていたものだ。


だけど、あの日を境に変わった。


沙耶はあれから何度も倒れ、何度も病院に運ばれるようになった。


急激に弱っていく沙耶を見てなにもできない自分がもどかしく思えた。


「よし!」


俺は自分に気合を入れるようにそう言い、ベッドから下りた。


俺はべたついた体をさっぱりさせるため、着替えを持って部屋を出た。


それと同時に階段を上がってすぐの場所にある、歩の部屋のドアも開いた。


歩は寝ぼけた顔でこちらを見ると「おはよう」と、欠伸をしながら言った。


「おはよう」


俺はそんな歩の頭をクシュクシュッと撫でて先に階段を下りて行った。


顔も同じ、体格も同じ、成績も、ほぼ同じ。


そんな双子の歩の事を、俺は親友のように思っていた。