「ふぅん? ねぇ、隣いい?」


そう言われて、俺は体をずらした。


ここねの甘い香りをすぐ隣に感じて、心臓がドクンッと大きく跳ねるのを感じた。


「いつもここに来てるのか?」


「うん。学校に行く前にこの公園で少しだけ勉強するの」


ここねはそう言うと、鞄から単語帳を取り出した。


「勉強?」


「そうだよ。前の学校より少しだけ授業が進んでるから、どこかで取り返さなきゃいけないでしょ」


そうだったのか。


授業内容については今までここねに聞いたことがなかったと、気が付いた。


「なんでこんなところで勉強するんだよ?」


「朝の公園って、なんだかとても気持ちいいでしょ? 鳥の鳴き声を聞いていると落ち着いて勉勉強ができるの」


ここねはそう言い、頭上で飛び回っている鳥を見上げた。


ついさっきまで疎ましく感じていた鳥が、ここでここねと引き合わせてくれたのだと思うと急に愛しく感じられ始めた。


俺は案外単純な人間なのかもしれない。


「歩は、なにか考え事してたの?」


そう聞かれて、俺はここねから視線を外した。


「まぁ……」


「さっきから、曖昧だね」


そう言われて俺は頭をかいた。