その中から沙耶の存在がはじき出されてしまった気がして、イラついた。


「好きな子ができたら、沙耶の事はもうどうでもいいのかよ」


そんなハズはない。


歩にとっても沙耶は大切な親友だ。


頭ではわかっているのに、歩が1人でどんどん前に進んで行ってしまう気がして、怖かった。


「どうでもいいなんて、言ってないだろ!」


歩がドンッ!と壁を殴った。


普段からそんなに感情を表に出さない歩にしては、珍しい行為だった。


歩はそのまま足音を響かせて一階下り、そのまま玄関を出て行ってしまったのだった。