カラスの鳴き声が聞こえる。
机の上には、束になり放置されている書類が退屈そうにおいてあった。
はやく片付けてしまわないと、またあの人にめんどくさく言われてしまう。
取りかかれば早いのだけど、何しろ私はそうなるまでの時間が長い。
今もする気が起きなくて、自分の身体の大きさには不釣り合いなくらい大きい椅子にもたれ、目を瞑る。
そうすると、より鮮明にカラスの声が聞こえる。
不吉だと言われるカラスだけれど、私に比べたらまだ良いではないか。
ある国では神の使いなんて言われているのだから。
…………あぁ、憂鬱だ。
そんなことをふつふつと考えていると、部屋の扉が開いた。
「………また外を見ていたのですか」
呆れ顔でそう言うのは、執事であるアレク。
彼の後ろで、束ねられた深青の髪がふわりと揺れていた。
「そろそろ取り掛かってくださらないと…」
「あなたは?終わったの?仕事」
「最中ですが」
アレクの言葉をさえぎるように言うと、彼はペラペラと紙を捲りながら私の近くに来る。
そして、あるページを開くと私に差し出した。
「………城下でのボヤ騒ぎ……また……?」
「はい。今月でもう6回目です。そろそろ本格的に犯人を洗われた方がいいかと」
この国には雑多な種族の人たちが住んでいるため、こう言った騒動は多い。
「どうせまた火吹きトカゲたちが遊んでるんでしょ」
そう言って頭を抱えた時、また扉が開いた。
「失礼しま………あ………」