もっと聞かせて うっとり酔わせて

ふわふわのフロマージュは

プランデーに漬け込んだチェリーの芳香な味がメインで

甘さは完全に控えめだった。

チョコレートケーキは

コーヒービーンズのほろ苦い大人の味が

チョコレートの甘さを消していた。

ミルフィーユは甘いカスタードクリームがまったく違って

パンプキンの味がした。

「どれも完璧に辛党の方にもオッケーなケーキですね。」

「納得できた?」

「はい。」

「ご両親は期限あるだろ?いつかは帰国すると思うが?」

「いいえ。二人で会社を切り盛りしているので当分帰らないと思います。」

「寂しいな。」

「大丈夫です。クックがいるので。」

「クック?」

「はい。ペットのハムスターです。」

「ハムスター?」

「はい。」

「ほったらかしで大丈夫なのか?」

「昨日ペットクリニックに預けたので大丈夫です。」

「最近はクリニックでも預けられるとは多角経営だな。」

「レンタルペットもやってますよ。」

「へぇ、動物病院も忙しいんだな。」

「クリニックだけだと利益が出ないと思います。」

「ずいぶん現実的なことを言うね。」

「経営学を専攻したので。」

「将来は家業を継げるな。」

「いいえ。継ぎません。」

「どうして?」

「そんな人生つまらないです。」

「じゃ、どんな人生ならつまらなくないんだ?」

「それはわかりません。とにかく継ぎたくないんです。」

「ま、その辺りはいろいろあるんだろうけど。」

「いろいろあるんです。」

「瑠花。」

「はい。」

「明日の予定は?」

「明日はディナーの予定があります。」

「それ以外は?」

「ないです。」

「じゃ、俺に付き合ってもらおう。」

「どこへ行きますか?」

「瑠花。」

声が近かった。

千葉さんの唇が耳に触れた。

「決まってる。ベッドだ。」