空港から千葉さんに電話を入れた。

「お疲れさまです。着きました。」

「ちょっと待って。折り返す。」

一度切りタクシーの列に並んだ。

すぐかかってきた。

「迎えに行けなくて悪い。」

こういう時でさえ

千葉さんの声に放心できた。

しかも耳元だ。

「瑠花、聞いてる?」

「はい。タクシーで向かいます。」

できればこのまま電話口の声を聞いていたかった。

タクシーの座席にもたれて。

これはもう重症のレベルだ。

それもかなり。

「気をつけて。待ってる。」

もっと声が聞きたかったが

渋々スマホから耳を離した。

取り合えず千葉さんの宿泊先へ寄ってから

親のマンションへ行くとしたら

何時になるか計算した。