「何をではなくて。」

「じゃ、なんで見る?」

「千葉さんの声がいいから、私の好きな声なんです。すみません。」

「はは~ん、そんな言い方はしない方がいいな。」

「どうしてですか?」

「他の男にもそう言ってるのか?」

「千葉さんが初めてです。」

「は~ん。」

「とにかく私の好みの声なのでどうしても聞きたくてついて来てしまったわけです。」

「声優オタクか?」

「違いますけど、私がうっとりできる声音とか声質があるんです。」

「なるほど。だから放心状態なわけか。まったく困った癖だな。」

「癖でしょうか?」

「瑠花。」

「はい。」

「声だけでノコノコと男について行くなんて、これからはやめてくれ。」

瑠花はうっとりした顔でいつまでも俺を見ていた。

テーブルに頬杖をついてだ。

俺は首を横に振ってコーヒーの残りを飲み干した。