「千葉さん?」

「ん?」

「私、小さい頃に溺れたことがあって、それ以来水が怖くて、でもヨットに乗ったりプールに浮かんでのんびりとか一度でいいから出来たらとは思うんです。」

「無理はダメだ。」

「今まではきっかけがなかっただけです。」

「言いたくなければ言わなくていいが、どこで溺れたんだ?」

「バルコニーに広げたビニールプールでです。」

「ビニールプール?」

「はい。恥ずかしいですけど。」

「珍しい。聞いたことがないな。」

「2歳の時、ほんの10㎝くらいの水だったんです。」

「子供にとっては何㎝だろうと関係ないな。」

「本当にそうですね。」

「なぜ?」

「はい?」

「どうして俺の誘いに応じたんだ?」

瑠花は俺の口元に視線を寄越した。

あの時もそうだ。

車内で俺の腹の上に座って同じように俺の口元を見ていた。

「俺の何を見てる?」