「ここですか?」

「そう、ここ。」

いやはやどうしたものか

いちいち確認するところは育ちなのか

堅実的なオーラが漂う辺りが

俺の回りにはいないタイプだ。

二人で車を降り

店のドアを開けて瑠花を先に通した。

「いらっしゃいませ。」

俺は片手を上げてマスターに挨拶した。

「千葉先輩!」

「腹ペコ。」

マスターは大学の後輩児玉新吾。

俺より5cmはデカイ。

「水曜にお珍しいですね。」

新吾は外にあるデッキ席が見下ろせる窓際のテーブルに案内した。

デッキの土台は半分海に浸かり

しっとりとした海風と眺めは最高だ。

夜は冷えるが。

瑠花は座りながらテーブルに置いてあるキャンドルに見入っていた。

虹色に輝く貝殻の皿の上にほのかに揺れる灯りは

女心を甘いもので包み込むような魔力を持つ。