できることなら、

透明人間でなく、本当に透明になってしまいたい。
このまま、すぅーと音もなく空気と一体になれたらいいのに。

そしたら、このつまらない教室から、世界から、抜け出すことができるのに。


私は小さく溜息をついて、教室を後にした。

私のささやかな願いが、決して叶わないことはもうわかってる。

この街に引越してきてから約3カ月。
毎日毎日祈り続けているのに、まだ叶っていないんだもん。


東京まで3時間もかかるような田舎の街も、ダサい制服も、地味なクラスメートも、何もかも、吐き気がするほど嫌い。


消えてしまえばいい。


だけど、一番要らないのは私。
一番消えて欲しいのは私。


透明人間になってしまった私は、もう誰からも、私自身からも、必要とされていなかった。