空って、こんなに青かったんだ。

 そんなこんなで説明が長くなっちゃったけど英誠のナインもこれとほぼおんなじようなことをそれぞれがダッグアウトでやっているんだ。そしてそれぞれが自分の頭に、タタキコム。

なかにはメモル、選手もいる。
主にスコアラーや捕手はね、だって公式戦で当たるチーム、県内同士なんて場合はナオサラダ。まあ、きょうはチガウけど。

じゃあ、なんで今日はチガウかって?それは相手が同県内でも高校生でもないから。
エッ、何それ?って思うでしょ、みんな。

なのでそれを代表して啓太がカントクに訊いてみたんだ。

「カントク、コレって一体、ナンなんでしょうか?」

するとカントク、おう、そうだな、って言ってみんなに説明をしてくれた。
そんで言うと、こんなこと。

「あいつらみんな俺の知り合いや後輩でみんな野球選手だよ、現役の。で、ほとんどがノンプロかクラブチームの奴らだよ。当然、甲子園や神宮、都市対抗の経験者もいるし、それどころか元プロもいるよ、たしかふたりかな?

だからアタリマエだけどツヨイよ。負けるよ、ユ・ダ・ン・ナンカしてると!」

別に油断?なんてしてないけどそういうことはハジメにイっておいてクダサイ、と誰もが思った。そうだ、ゼンインガだ。

そしてそんな彼らにさらに追い打ちをかけるようなことが起こった。
みんながビビり始めたヤサキ、駿斗がうなり声をあげたんだ。

「エッ~~~?」

だからゼンインが駿斗を見て、そしてその視線の先に目をやった。
するとそこは相手チームのブルペンだ。

当たり前におそらくは先発ピッチャーと思われるヒジョウに怖い顔をしたお方、が投球練習をしているのだけど次の瞬間、そう、そのお方がボールを投げたその時、みんなが駿斗の叫んだ理由を理解しちゃった。

ナナナンと、そのお方のオナゲニナッたボールは、ほぼ間違いなく、しかも誰の目から見ても150キロを優に超えているのだ。

そして、キャッチャーの捕り方がよほど上手なのであろう、そのパチッーン、というミットを鳴らすの金属音のような乾いた音の良さがますますその速球の威力の凄みを助長している。

「タマランナ~」

クリーンアップトリオの一角を担う強気の健大が思わずため息を漏らすようにつぶやく。
もう完全にハタイロ?がわるい。

なのにカントクは、選手たちの気持ちなどサラサラ思いやろうともせず、さらに英誠ナインの不安を煽るようなことを言う。

「あいつ、今日はハシッテないな」

思わず近くにいた啓太が「エッー」と驚いて訊きなおしたほどだ。

「アレデデスカ?」と。

そうこうしていると今度はトスバッティングを終えた野手たちがそれぞれの守備位置に散ってシートノックが始まった。

ただでさえ心理的にマモリ?に入ってしまっている英誠ナインはもう口をアングリとするしかなくなった。

セカンド、ショートがそれぞれ絡む併殺プレーの早いこと、俊敏なこと。三塁手、一塁手のダッシュはまるで獲物を狙う豹のごとく素早いし、さらに外野手の肩の強いこと強いこと。

特にセンターの肩は前進守備はおろか、定位置からでもタッチアップのランナーを刺してしまうんではと思わせるほどの強肩だった。

それを見ていたカントクのなぜか得意げな表情、そして言う。

「どうだ、相手にとって不足はないだろ?」

しかしここで勇士の生来の負けん気が出る。

「べつにあのくらい、稲森に比べればコスイでしょ?」と。

しかしみんなのビビりが完全に消え去ったわけではなく、思わずキャプテンである啓太が、
おそらくはみなの今の気持ちを代表して訊いてくれたんだろう、カントクに。

「今日はコールドはありますよね?」

でもカントクはツメタクイイハナツ。

「ナイヨ!」

そう、コールドゲームとは本来、雨や日没などで試合続行不可能な時に適用されるものだったのだけれど、プロ野球以外ではあまりに実力差があるときにも使われるのだ。

もう実質的に「試合が決まっているとき」「これ以上敗者にみじめな思いをさせないため」でもあったりするワケ。

だから啓太は我が英誠学園野球部が相手チームにボコボコにやられてミジメな思いをせずにすむようにカントクサンに
「コールド」の有無を確認したのだ。

でも、カントクサンはこう言った。

「その件については初めから話してある。何点差がついても九回までヤル」

そういうことにナっている、らしい。ザンネンダケド?

もう、肝を据えるしかないよ!啓太!

さあ、まもなく試合が始まるよ!
英誠ナインも気を取り直してイコウ!ちなみについさっきカントクサンから発表になった英誠学園のスターティングメンバーだよ。

一番ショート、小林祐弥。

二番サード、松本亮太。

三番セカンド、刀根護。

四番センター、稲森拓海。

五番ファースト、平山健大。

六番キャッチャー、龍ヶ崎勇士。

七番ライト、久保田圭介。

八番レフト、杉山駿斗。

九番ピッチャー、川津星也。

以上だ。そしてジャンケンで勝った英誠学園が後攻めを取って試合は始まった。

「プレイ!」
主審の右手があがったと同時、大きなコール。さあ、試合開始だ。