ズルズルとイスを引いて座ると、胡桃が咳き込んだ。
お父さんとお母さんの胡桃センサーが敏感に反応し、心配そうな4つの目が胡桃を刺す。
「昨日も咳が出てたよね。今朝は送って行こうか」
「そうね。お父さん悪いけど送って行ってくれる」
過保護とも見える両親だけど
胡桃は身体が弱くて
激しい運動もできず、すぐ熱を出して病院のお世話になる事が多い。
『紅葉が私の健康を吸い取って生まれてきたかも』って、熱を出すたび冗談まじりに言われて
『いやー失礼だねー』って、笑って胡桃に反論するけど
心の中では
『そうかもしれない』って泣いてる私。
私と胡桃は双子だけど
胡桃は賢くて
イケメンで品の良い
お父さんのDNAを受け継いた可愛い女の子。
私は体育会系の単細胞
お母さんのDNAをしっかり受け継いでいる。
それは仕方ないとして
雪ってなによー!
もう4月の下旬なんですけど。
春でしょう!
いくら北海道ってもこの時期にどーよ。
春休みに近所の農家でバイトして、ネットで買った白のパーカー。
予約販売の品物がやっと昨日届いて
今日デビューしようと思ってたのにぃ。
ほっぺた膨らませてサラダを食べてると
「私も自転車で行きたいなぁ」って胡桃が溜め息交じりにそう言った。
台所から届くお母さんの視線が痛い。
はいはい。わかってます。
私が『チャリで行く』って言ったから悪いんでしょう。
身体の弱い胡桃を気づかわなきゃいけないんだよね。
気の利かない姉ですんません。



