男性2人でなんやかんやと話しつつ、葉山という男子は亜美にも名前を聞いた。
「……秋元、亜美。です」
「そっか。よろしくね、亜美ちゃん」
にこにこと笑う葉山くんは亜美に手を差し出した。
亜美がおずおずと握り返す。
手が離れたのを見計らい、私はそこから離れた。
葉山くんと亜美が握手をしたとき、周りにいた女子の空気が陰湿なものになった。
このままここにいたら、亜美があとで何か言われかねない。
私は、亜美が後ろに付いてくることをわかっていて教室に入った。
「えっ、ちょっと君!」
後から葉山くんの声が聞こえた気がするけれど。
……………気にしません。
私は、とりあえず自由らしき机に適当に座り、ため息をついた。
「初」
つんつんと後から私は亜美につつかれ、振り返る。
「ありがと」
「ん」
どうやら亜美も空気には気がついていたらしい。
たぶん、大丈夫。
そう、
やっと、安心していたのに。
隣に男子が座ったため、そちらを見上げると。
「…っ!?」
黒州といった彼が、じっと私を見つめたまま席についていた。
その後ろ、亜美の隣には葉山くん。
………なんで。
なんっで隣に座るの!?
亜美もどうしたらいいのかと言った顔で目を泳がせていた。
あぁ、これは。
大丈夫じゃないかもしれない。
………私を含め。
「なぁ」
そんな私の胸中など知るよしもない彼、黒州くんは頬杖をつきながら私を見た。
「アンタ、名前は?」
「………言わないといけない?」
「どうせ自己紹介で言う」
「ならそのときでいいでしょ」
なんだこの人はと思いつつ会話をしていると。
ぐっと彼との距離が近くなった。
机から身を乗り出した彼は
「…いいじゃん。教えて」
………は。
「は?」
なんだろう。
なんか。
…………めんどくさ。



