空の青はどこまでも蒼く

翌日、少し残る頭痛を抱えて、出社した。
社のエントランスホール、エレベーターの前、昨日見た背中がそこに立って居た。


今までにも、こんなことはあったんだろうか?
彼がエレベーターホールに立って居て、私がその後ろ姿を眺めていたことが。


ん?
山野君はいくつだ?
有希が、『山野君』と紹介するくらいだから、年下なんだろう。


彼が入社してから、今までにもこんな光景は何回かあったんだろう。
けど、昨日、声を掛けられるまで、気にも留めなかった。


よく考えれば、あれだけのイケメンだ。
エレベーターで一緒になれば、見忘れるはずがない。


なら、一緒になったことはないのか?


回らない頭で色々考えていたら、目の前に、山野君の背中があった。


「おはようございます、石田さん。」
「えっ、あ・・・おはよう、山野君。」


彼は、またも振り返らず、私に声を掛けた。


「昨日は飲み過ぎたんですか?美人が台無しだ。」
「えっ?何?また、急に・・・・」


彼の言葉に翻弄される。
昨日、会ったばかりの、昨日、初めて話しただけなのに、ずっと前から知ってたような振る舞い。


エレベーターが降りて来て、そこに居た全員が乗り込む。
私達を含めて、10人足らずというとこだろう。
周りを見れば、知らない面子ばかりだった。
そう言えば、毎日毎日、部に着くまで見知った顔に会ってなかったような気がする。


「石田さん、今日も呑みに行かれるんですか?」
「今日は行かないわよ、って、山野君、馴れ馴れしくない?」
「そうですか?ちゃんと敬語使ってますよ。」
「そういう問題じゃなくて・・・」
「今日、お友達と呑みに行かれないんなら、今晩、俺に付き合ってくださいよ。」
「は?え?どういうこと?」


ポーン


エレベーターは私の降りる階に止まった。


「ね!さぁ、降りてください。」


そう言って彼は私の背中を押し、エレベーターから降ろされた。


「ねぇ!!」


振り返り、閉まりかけたエレベーターのドアに向かって私は叫ぼうとしたが、ドアの向こう、作られた笑顔で手を振っている山野君に何も言えなかった。
否、言わなかった。


その張り付いた笑顔が私を惹きつけた。